- トップページ
- >
- 欲求との「上手な付き合い」が鍵
欲求との「上手な付き合い」が鍵
- 2020/01/31
50代に入りますと、定年が目の前に迫ってきます。
60になりますと、昔から「還暦の祝い」をします。
これは、「人生は、一巻の終り」(人生はただ一度の招待であり、普通一巻しかありません)です。
赤いちゃんちゃんこなどを着て、踊ったりするどころではありません。
グリムの童話でも、「60からは猿の人生」‥赤い着物を着せられて、ヒモを付けられ、猿芝居を演じます。
人間生活の第一線から引退して、顔役になるのがいいところです。
肉体的に見ても、皮膚のシワは深くなり、シミもでき、手足の関節もぎこちなくなり、真の老化が始まるのです。
寿命も延長し、インフレは加速され、しかも核家族化の進む今日、先のことを考えますと、退職金や年金だけでは、おちおち眠れなくなるでしょう。
「病気は苦しいもの」と言いますが、病的変化それ自身の苦痛よりも、「病気が悪くなって、もし死んだら」と考えることが遥かに大きな苦痛です。
がんの苦痛と言いますが、これも、死への不安が、苦痛なのであり、不安におののく苦悩なのです。
昔からの「安楽死」(今日の「植物人間」にたいする「安楽死」とは意味が違います)を願うのも、「ぽっくり寺信仰」も、「死ぬまでの苦悩」から逃れたいからであろうと思われます。
心の不安が、肉体に影響を及ぼすのは、「心を持つ動物」の特徴です。
欲求不満も、心の健康の大敵です。
ギリシャ神話に、「タンタロス状態」というのがあります。
タンタロスが罪を犯して、首だけ出して全身を地中に埋められました。
腹が空いてきたころ、ご馳走が目の前に現れ近づいてきます。
首を伸ばして食べようとしますが届かない。
やっと届きかけると遠のいていきます。
これを、繰り返している内に、ついに「気が変」になるというのです。
今日の人々は、このような状態に、多かれ少なかれ置かれています。
マスコミのCMで欲しいものを目の前につきつけます‥おびただしい情報が、欲望を募らせ、不安を掻き立てます。
ここに、心の健康は乱され、、ノイローゼのような「心の病気」や、精神病も起こるわけです。
ノイローゼは精神病(幻覚があり、病気だという意識がありません)ではないと精神医学では言いますが、とてつもない行動に走り、事故や大事を引き起こすことが、この頃とみに多くなったことから考えますと、いわゆるノイローゼこそ最も重要な社会問題でなければなりません。
人生の内で、精神障害(精神病も含めて)の最も起こりやすいのは、初老期と思春期でありますが、心の健康のためにとりわけ重要なのは、欲求を募らせ、欲求不満を起こす原因を、自他ともに取り除くことであります。