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腫瘍の形態と構造
- 2021/02/16
<腫瘍>
1.腫瘍の一般
(2)腫瘍の形態と構造
腫瘍の肉眼的な形態は、均等な結節と言えます。例えば、肺、肝臓や脳などの実質臓器の腫瘍塊を見ますと、周囲へ等しく増殖拡大しますので、球状の結節を作ります。このような結節の境界は、時に正常組織と極めて明確に判別できますが、時には不明瞭です。腫瘍の増殖が、周囲に対し圧拝的、拡張的に進展するか、正常組織の感覚へ浸潤性に入り込んでいるかによつて、協会の鮮明度は変わってきます。
おおよそ、増殖速度が遅く、膨張性に増殖するもの(膨張性発育)は、境界鮮明で、破壊性も少なく、個体を死に至らしめることはありませんが、逆に増殖速度が速いほど、破壊性も強く、周囲へ浸潤し(浸潤性発育)、また、転移を起こし、個体を死に至らしめることが多いです。従って、膨張性発育は良性腫瘍、浸潤性発育が悪性腫瘍に当たります。
また、消化管粘膜とか皮膚などの表面を持った器官の粘膜にできた腫瘍では、表面から突出する外方増殖と、内部へ向かって潜り込む内方増殖とがあります。
さらに白血病など、腫瘍を作らない腫瘍増殖もあります。血液という液性の環境の中で、自由細胞として増殖するわけです。しかし、白血病といえども、実質臓器へ転移した場合には、集まって小結節を作ることがあります。
腫瘍の色は一般的に灰白色です。これは主として血管が乏しいか多いかに関係があり、例えば血管の豊富ながんは決して白くはありません。他方、黒色腫のように積極的にがん細胞がメラニン色素を作る場合や、脂肪種のように脂肪色素を作る場合は特徴のある色調を呈することになります。
腫瘍の硬さは、当然のことながら、骨肉腫のような物は骨様に硬く、軟骨腫では軟骨様弾力硬です。しかし、がんのような上皮性の腫瘍では、腫瘍細胞と間質の結合組織線維の多少によって硬さは変わってきます。腫瘍細胞が密集し間質の少ないがんは柔らかく、髄様がんと呼ばれ、間質に富むものは硬く収縮性であり、硬がんがその代表です。
腫瘍はまた二次的に、壊死や出血を起こしやすく、そのため肉眼像は修飾を受けます。従って、腫瘍の肉眼的観察は重要となります。丁寧に観察すれば、他の病気との識別は容易です。しかし、早期がんのような場合は、顕微鏡レベルで初めて診断が可能なこともあり、肉眼では全く捉えられないので、注意を要します。